総務省の発表した資料によると、現在幅広い年代の人がワーカーとして活躍するクラウドソーシング市場は、今後もさらに拡大を続け、「2017年度には1,473.8億円規模に達する見込み」であるとしています。
市場の拡大とともにクラウドソーシングサービスを提供する会社も年々増加しており、システム構築から記事のライティングまで幅広く案件を揃える「総合型」、エンジニアやプログラマーなど専門職向けの案件を揃える「特化型」など、ワーカーが自分のスキルに合わせてより働きやすい環境が整いつつあります。
クラウドソーシングの特徴の一つは、「場所にとらわれない働き方」。
パソコンとインターネットがあれば、誰でもやりたい仕事を受注することが出来、収入を得ることが出来るシステムは、「地方に住んでいるひとりの個人でも、在宅のまま離れた場所にある企業の仕事に携わることが出来る」という新しい働き方を提案し、また企業にとっても遠くに住むワーカーともサービス会社を通してやり取りが出来る仕組みとして、ワーカーと企業ともにメリットがあります。
今後、ワーカーが増加を続ける中で、クラウドソーシングはどう成長し、地方に住む私たちの働き方はどう変化するのか。
クラウドソーシングサービスの取り組みを紹介しながら、考えてみたいと思います。
クラウドソーシングという働き方をより身近にする取り組み

2016年3月4日、「クラウドワークス」は、一般社団法人MAKOTOと連携し、東日本大震災で被害を受けた福島県の復興、起業家の誘致を目指した「福島県を起業家で元気にするプロジェクト」を立ち上げました。

これは、震災後福島に移住・帰郷した若者たちの起業を応援し、地域の復興とともに新しい雇用の創出をはかる取り組みであり、福島県外の起業家の誘致も目的としています。
「クラウドワークス」内でビジネスモデルを募集するコンテストも始まっており、起業を考える全国のワーカーにとっては大きなチャンスと言えます。
この取り組みでは、東北のベンチャー企業や起業家を応援する一般社団法人MAKOTOと連携することで、地場産業の発展や販路の拡大、アピールなど、より地元に密着した展開が期待されます。
「クラウドワークス」にとっても、東北地方にUIターンを希望する人やそこに住むワーカーの利用率を上げることが期待出来、規模の拡大にも繋がる取り組みだと言えます。
同年2月26日には静岡県裾野市と連携し、裾野市が提供する子育て支援アプリにおいて、妊娠~産後安定期の仕事をクラウドワークスが提供するコンテンツが始まりました。
2月19日には、千葉県木更津市が実施する「子育て世代女性応援プロジェクト」において、「クラウドワークス」を利用した在宅ワークを促進するためのセミナーの開催が計画されています。
これら「クラウドワークス」と自治体や団体との連携は、ネットでの宣伝を超えてこのような働き方もありますよ、という提案をより多くの人々に知ってもらうことが出来、その地方に住む潜在的なワーカーの掘り起こしに繋がります。
クラウドソーシングの存在を知ってもらい、より在宅ワークを身近に感じてもらことで、育児中で外に働きに行けない女性など労働に制限のある人々にとっては、収入を得る新しい手段の一つとして選択肢が広がることになります。
移住者を増やしたい自治体にとってのメリット
上記のクラウドワークスによる「福島県を起業家で元気にするプロジェクト」と同じような取り組みとして、「ランサーズ」は2016年2月29日、宮城県女川町とNPO法人アスヘノキボウとの三者による連携協定を締結し、『勝手にフリーランス特区』計画など、県外からの移住者を呼びこむ取り組みを開始しました。
これは、女川町が計画を進める「お試し移住プログラム」と平行して、住居費の無料化、コワーキングスペース(個人が独立して仕事をしながら空間を共有することでコミュニケーションもはかれる場所)を無料で利用出来るなど、フリーランスにとって仕事のしやすい環境を整えることで、女川町を活躍の場にしてもらいたいという狙いがあります。
これにより、移住を考えるフリーランスにとっては良い機会が生まれ、女川町にとっても人口の増加、情報発信が増えることで街の発展がより進むメリットがあります。
クラウドソーシングを推進する地方であれば、上記のようなセミナーで常に情報が身近になり、また住居が確保してあれば、移住に対するハードルはずっと低いものになると思います。
自治体や団体との連携では、移住に関する課題にもクラウドソーシングのメリットを活かす就労支援の取り組みが期待され、より多くの人が住みたいところで働ける未来になるのではないでしょうか。
地元の企業・団体とのコラボレーションでより働きやすい環境を

「クラウドワークス」は、2014年7月より「クラウドワークス・アンバサダー」という地方でのクラウドソーシングの活用を支援する認定アンバサダー制度を開始していますが、同年11月、宮崎県日南市が新設した日本初のコワーキングスペース「赤津赤レンガ館コワーキングスペース」をクラウドワークス・アンバサダーに認定しました。
これにより、「クラウドワークス」に登録しているワーカーは「赤津赤レンガ館コワーキングスペース」内にある「クラウドワーカーズシート」を無料で利用することが出来るなど、実際に働いていく上でもより良い環境がワーカーに提供されます。
「赤津赤レンガ館コワーキングスペース」は、フリーランスが利用するだけなく地元住民による起業、UIターン者の起業の支援などを行う考えですが、クラウドソーシングサービス会社が地元の企業や団体と手を組んでこのような場所を設けることは、ワーカーにとっても仕事を行う場所が選べるというメリットがあり、また地元の活性化にも寄与することだと思います。
「クラウドワークス」と宮崎県日南市は、2015年1月に「クラウドワーキングで月収20万円以上を得られる市民を育成するプロジェクト」を開始、同年5月には「宮崎県日南市☓クラウドワークス特別企画 トップワーカーに学ぶ! クラウドワーキング入門講座(見学自由!)」を開催しており、現在もクラウドソーシングに関するニュースを地元のメディアなどが取り上げています。
今後は、このような地元の企業や団体を巻き込んだ取り組みが増えることで、地方においてクラウドソーシングという働き方を選ぶ人が増え、また地域の活性化も期待出来ると思います。
クラウドソーシングが貢献する「地方創生」
現在、クラウドソーシングを推進する自治体や団体はまだまだその数が少なく、そのほとんどが、人口の少ない地方であったり、復興を目指す地方であったり、大都市にはない課題を抱えている地域です。
クラウドソーシングという働き方を積極的に地元の人たちに提案していくことで、人口減少に歯止めをかけ、地元の盛り上がりを助け、また移住者を取り込むことにも繋がります。
地方こそ、このような官民一体となった取り組みを進めることで、住民一人ひとりが自立して働ける機会を得るべきではないかと思います。
クラウドソーシングが貢献する「地方創生」とは、誰もが働いて収入を得る機会を手にすることであり、そこから生まれる力を地域にも活かし、発展させていく大きなチャンスではないでしょうか。
【こちらの記事もオススメ】
■ クラウドソーシングを利用する女性の現実 -ワーカー主体の働き方で道を切り拓く-
コメントを残す