製作年 2010年
製作国 米=スウェーデン=英=カナダ
原題 THE KILLER INSIDE ME
時間 109分
監督 マイケル・ウィンターボトム
R-15
「たわ言は馬鹿相手に言え」
という、ひとりの馬鹿な殺人者を中心に可哀相な女の子たちがフルボッコにされる映画。
女性への暴力が嫌いな人は本気で観ない方がいいったらいい。
主人公フォード(ケイシー・アフレック)の容赦ない暴力に身が竦む思いがした。
ジョイス(ジェシカ・アルバ)とエミリー(ケイト・ハドソン)に訪れる突然の悲劇。
何故そこまで、と憎しみをこめているとしか言いようがない拳の握りよう。「ごめんね。もう終わるからね。愛しているんだ」と、やってることと正反対なことを言いながら執拗に殴りつける姿が恐ろしい。
オープニング、何でいきなりベルトでお尻ペンペンなの?で、何でそのままヤっちゃうの?とびっくりしたけど、ただのサディストじゃないんだよね。
痛めつけることに喜びを感じるんじゃない、ただもう「殺すしかない」という諦めみたいな闇が溢れる心の中と、外で見せるまともな姿のギャップが異常。終盤に向かうにつれ、そのアンバランスさが一本に繋がっていく歪みが面白い。
「アメリカン・サイコ」と違うのは、フォードが常に冷静で、殺すことに特にこだわりも悩みもなく、日常の一つみたいな感じで始めちゃうとこ。
ドラッグや酒も使わない、昼も夜も関係ない、ただ時間が来たからみたいな感じで突然スイッチが入る、その殺意の軽さ。で、始まると途端に重みを増す拳。
もう「彼女」とすら扱われていない、いっそ身近だからこそあそこまで本気で「唾棄」する存在に貶めることが出来る、その真っ暗な心が恐ろしい。
おかしかったのは、銃であっさり殺すシーンもあること。
ジョイスが撃ったことにしたかったんだろうけど、それにしても殴りがいのあるタフな男を目の前にして勿体ない。
あの流れ者もナイフで刺そうとしていたけど、女性にしか向かない暴力性がこう、弱い者をいたぶりたいみたいな残虐さがあって良かった。
暴力といえば、エミリーとのセックスも愛情が感じられない。ひたすら雑で荒い抱き方と、殺したいという衝動がリンクしちゃって嫌だ。でも、ほんとに好きだったら、我慢するんだろうなぁ・・・。
バカと言えば、この女性たちも、そうなのかもね。
どうして逃げなかった。
彼の何を信じたんだ。
でも・・・
離れがたい魅力、というものがあって、それは女性にしか発揮されないものであって。
取り憑かれたら終わり。
サイモン・ベイカーが冷静な検事の役で出ていたけど、もっとフォードを追いつめて欲しかったなー。
ビル・プルマンの登場は意外な喜びだったけど、チョイ役過ぎて勿体ないよー。
結局、「知らないのはオマエだけ」=「もうみんなバレてるよ」、という滑稽さ。
ラストのどんでん返しはびっくりしたけど、つらい。
何かなぁ、ジョイスの姿がもう、愚かより哀れで・・・嬉しそうに笑顔を見せて「俺も愛してる」と言うフォードの姿も痛々しくて、たぶんこいつに一番与えたらいけない喜びを、最後に味あわせてしまったという・・・。
あの一瞬、サイモン・ベイカーが保安官助手に手を伸ばすんだよね、やめろみたいに。でも間に合わずに発砲して火がついちゃうわけだけど、この壮絶で盛大な終わりは予想出来なかった。
まさにタイトル通り、内に抱えた殺人者に自ら殺される、何だかせつないお話でしたとさ。
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