【黒韓流】【ミステリー】「黒く濁る村」(※ネタバレ)

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製作年 2010年
製作国 韓国
時間 161分
監督 カン・ウソク
PG-12

20110926223358

ひたすらユ・ジュンサンさんがいい味出してる映画。

彼が演じるパク先輩がもーひっとり大騒ぎして面白い。

主人公ユ・ヘグクのせいで田舎に左遷された検事さんなんだけど、その恨みの深さ、とにかく電話でもまともに会話しないひねくれ具合が素晴らしい。

「友引忌」でも相当おかしかったけど、この悪人ヅラなぁ・・・いいよなぁ。

最後まで殺されやしないかひやひやしてた。たいていこういうキャラだと真相に迫る終盤あたりであっさりやられちゃうし。

が、パク先輩は最後までしっかり犯人を追いつめ、ヘグクを救い、自分もソウルに戻るという超ハッピーエンドなのでした。めでたしめでたし。

「俺を潰してまで得たものは何だったのか、教えてもらおう」と電話口で憎まれ口を叩くものの、ヘグクに頼まれて不承不承事実を調べてみれば想像を上回る大事件。こら見過ごせない、とひそかに調査を進めていきながらも、ヘグクには絶対甘い顔をしない。「死んでから電話してこい」には笑ったけど。

ヨンドクがパクに会いに来るシーンは良かった。

仏頂面で、笑顔の一つも見せず、上司の「仲良くしておけば損はない」という言葉も頭から無視、きっぱりとヨンドクに信用していない旨を告げる姿はかっこいい。「お前の書類を読むだけで忙しいんだ」という捨て台詞も素敵。

パクが、実家が貧しいらしく母親が住んでいるのは下層住宅、という設定もいいんだよね。ヨンドクが嫌味ったらしく声を掛けるのに、振り向いて「お前が嫌いだ」と言い放つ芯の強さ。作中、そんなパクの事情を思わせるシーンはないと思うんだけど、本人は気にしていないのか、ヨンドクの下衆な人間性を蔑んだのか、どこまでもきっぱりとした態度で真相に迫ろうとする姿だけがこの作品の安心感だと思った。

村長のチョン・ヨンドクがねぇ、頻繁に若い頃のフラッシュバックが入るもんだから、あからさまに老けたメイクをしているのが分かってしまって何とも興ざめ。

凄みのきいた目つきとかいいけどね。骨から悪いってこういう奴だろ。そしてこういう奴がたいてい頂点まで登りつめる。

最初、すげー、老人のくせにパソコン使いこなしやがる、ネットも達者に出来るし、警察や検察の上層部までコネを持ってやがる、と感心したけど、何てこたぁない、刑事をしていたからその狡賢さだけで渡り歩いてきただけという、田舎特有の簡単な構図が分かりやすくて良かった。

仲間の中で唯一可哀そうなのはドクチョンだった。

「白紙」だから、というヨンドクの言葉には納得させられる。ちょっと知能が足りなくて、他の皆のように後ろ暗い過去もないし、単に愚鈍なだけ。だからこそ、ヨンドクは安心して傍に置いておけた。「信頼していた」は嘘だろ、ただ野心がないから根首をかかれる心配もないってだけだろ。

他の、マンソンとかそこら辺はもう、腹の底まで真っ黒だから、絶対に信用出来ないし。

何だかんだと使われた挙句にあっさりヨンドクに殺されちゃって、哀れで仕方ない。

結局、父はこの村で何をしていたのか。

同じ人間とは思えないほどの高潔さ、清らかさは、無垢に信じる人にとってはどこまでも高い神性を保っていられるだろう。だけど、まったく別の世界、ヨンドクやマンソンみたいな人間にとっては、その神性すら鬱陶しい。最初はひれ伏す。何をやっても音を上げない強さに畏怖を抱く。が、時が過ぎれば否定出来ない自分の欲望に逆らえず、弱さを克服出来ず、結局昔よりタチの悪い人間となる。「更生」というのは、ユ氏の神性を本当に理解する「信者」にしか訪れない。

神より狡賢い悪の方が、この世ではずっと生きやすい。そんなことを思った。

皆、散々もったいぶってユ氏のことを「村の始まりと終わりと作った」ばっかりだし、よほどのことがあるんだろうと期待したんだけど、要は彼を利用して今の村を築いた、ヨンドクが地位を得たってだけの話。

ヘグクに探られたくなかったのは、信者から無理やり没収した土地の権利書とか、金の帳簿とか、そんな書類の山だった。

序盤、ただ父親が死んだから来たというヘグクを異常に厭う皆の様子が不気味だったけど、ストーリーが進むにつれてだんだんとそのおかしさが薄れていってしまうのが残念。ヘグクが普通に「捜査」出来るんだもんなー、もっと怪しげにして欲しかった。そんなあっさり抜け道とか見つかったらつまんないじゃんね。

ユ氏のすごさを目の当たりにするところから始まったから、こんな雰囲気でいくんだろうと思っていたのに、ボスであるヨンドクの卑小さのせいでただの追いかけっこになってしまった。

村も、確かにヨンドクの息がかかっているとはいえ特に閉鎖的という感じでもなく、山の景色もとっても綺麗。

ヨンドクを畏怖している人間たちが仲間以外あまり映されないからそう思うんだろうな。

何だかんだいって絶体絶命まで追いつめられないヘグク。気を抜くとちょっと目を大きくした堺雅人に見えるんだけど、いくらパク先輩の助けがあるとはいえ、ひょいひょいと都合良く進んでいける姿は逆にじれったいよ、もう。

ここら辺までなら、日本の二時間ドラマでも十分面白そうな内容だった。すごい悲劇があるわけでもない、ゴアもない、父は殺されたと思っていたけどただの老衰で、その立場を利用してのさばっていたヨンドクも自殺して、ヨジンも解放されて良かったネーみたいな。こんな真相にして。

が。

この映画の一番怖くて一番面白いシーンは、ラスト1分くらい。

皆の中で、一番の悲劇はヨジン。

ヨンドクの鬼畜ぶりもすごいが、ヨジン自身は、それを上回る狡猾さでこの村の幕を下ろす。

その「手段」しかなかった。ヨンドクたちの裏をかき、ヘグクを誘導し、どうなるかを見越して、誰よりも抜け目なく動いていた。

自分の思い通りにするために。

それが分かるラスト、立ちすくむヘグク。

ヨンドクたちが死んで、この村は救われたのか、それとも今から黒く濁るのか、ユ氏のような神でもない、ヨンドクのような悪魔でもない、ヨジンの姿が忘れられない。

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