【中国】【ヒューマンドラマ】「海洋天堂」

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原題 海洋天堂
製作年/国 2010年/中国
配給 クレストインターナショナル
時間 98分
監督 シュエ・シャオルー

「海洋天堂」

平凡にして偉大なるすべての父と母へ。
ジェット・リーが、ノーアクションで臨んだ上、ノーギャラで出演を熱望したという作品。

末期がんで余命わずかと言われた父親が、ひとりで残される自閉症の息子のために何が出来るか、というお話なのですが。

自閉症については、専門家じゃないし知識もないので触れないけれど、それでも、「障害者の子どもを男手一つで育て上げた」という役の彼は、本当に「素晴らしい父親」だった。

この、自閉症の子ども役を演じたウェン・ジャンという人は、実際に障害者の子と何時間も一緒に過ごし、監督と一緒に違和感のない役柄を作り上げたそうだ。
作品での存在感はリー様よりも重たく、それは、決して私には窺い知ることの出来ない彼だけの「世界」があるからだと感じた。
主役はリー様だけど、ストーリーの中心は彼であって、ラストでは本当に愛おしいと素直に思えるくらい、生きる姿に深い感動を覚える。

それと対照的な、まさに「一般人」であるリー様。
ただ息子のためだけに、自分が死んだ後も何とか生きていけるようにと、苦しい体を引きずりながら駆けずり回る姿は、自分でもそうするだろうか、自分だったら、こんなに頑張ることが出来るだろうか、と考えさせられるくらい、感情移入してしまう。
それくらい、普通のお父さん。

「海洋天堂」

自分の体のことは差し置いて、ひたすらに、息子に「生きる術」を教える。鍵の開け方、卵の割り方、買い物の仕方、道の渡り方、バスの乗り方。
一つひとつを丁寧に辛抱強く伝えないといけないんだけど、本当に出来るかどうかをしっかり確認する作業まで徹底していて、そこに、時間がないという焦りを感じ、また、息子への愛情も感じる。

 「自分には障害者の息子がいるから、再婚した相手に負担をかける」

自分のことを想ってくれていて、また自分も好きな気持ちを抱く女性(ジュー・ユアンユアン)に対しても、自分ではあなたを幸せにすることが出来ないと淡々 と語る姿は、淋しさを含んでいてもなお、息子のために生きることを大切にしようとする前向きな気持ちが伝わってきて、泣ける。

 「閻魔さまから逃げおおせた。あの子には居場所がきっとある」と笑いながら話す裏で、どれほど悩み、葛藤を抱え、苦しんだか、冒頭のシーンが後から効いてくる。

中盤以降からもう、涙が溢れて仕方なかった。

理解のある周囲の助けもしみじみとあたたかいと思うけど、何より、最後まで息子に伝えたい、自分がいなくなっても息子が生きていけるように、自分にやれることは全てやりきろうとする心。
自分の死とも、残される障害者の息子のことも、真摯に受け止めて呑み込んで、自暴自棄になることもなく、真正面から向かい合うその「愛情」。

平凡にして偉大なる父親。
最後に彼が息子に伝えたかったこと。

最後に伝えるべきだったこと。
素晴らしいラスト。

彼は「素晴らしい父親」のおかげで、これからも「素晴らしい自分」を生きていけるだろう。
そう確信した。

「海洋天堂」
クリストファー・ドイルの映像は、以前観た「ラビット・ホラー3D」でもあの独特な静けさを味わったけど、こちらはより一層、その美しさを堪能させてもらった。

水族館という場所が最大限に活かされていて、常に陽のそそぐ明るい水槽が何とも印象的。その中で魚のように泳ぐ息子の楽しそうな様子、無垢な心がとても美しい。

シャワーを浴びてはしゃぐシーンなど、ここでも「水」が効果的に使われていて、痛みと焦りに襲われて苦しむ父親と対照的に自分だけの世界を楽しむ彼の姿が、本当に純粋で心に沁みる。

久石譲の音楽も、一貫した穏やかな流れがとても心地よかった。描き出すのは、どこまでも「愛情」。リー様と息子の「絆」を感じさせてくれる。

誰が演じても、こんな「父親」になれただろうか。
いっそ、「母性」を感じるくらい、しなやかな強さ。
ジェット・リーだからこそ、内側から伝えられる力強さがあったんだと思う。
あぁ、大好きだよリー様。

これからは、こういう作品もいいかもね。

 

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