製作年 2008年
製作国 韓国
時間 125分
公開日 2009年5月1日(金)公開
監督 ナ・ホンジン
R-15

正義なんてない。
何か・・・「踊る大捜査線」みたい。
市民の顔色やら組織のメンツばかり考える警察と、これみよがしに警察を馬鹿にする検察と。
中途半端に拷問されたまま、苦しんでいる被害者と。
やっとの思いで脱出したのに、釈放されたヨンミンによってまたとっ捕まるミジンの悲しさったらもう・・・・・。
オマエら全員首吊れよ。馬鹿ばっかり。
主人公ジュンホ(キム・ユンソク)の小悪党ぶりが気持ち良かった。織田裕二よりこっちの方が人間くさくて好き。
元警官なのに出張マッサージ店なんてやって、女も全然大切にしていなかったのに、最初に犯人のヨンミン(ハ・ジョンウ)を追いかけて捕まえたのも何処かに女を売っていてそれが許せないから、っていう正義感も何もなかったのに、いつの間にかヨンミンを追いつめる。
ミジンの娘ウンジの存在がねぇ・・・つらい。ジュンホは、彼女のために、母親を探してやろうと思ったのに。ヨンミンが「女は生きている」と呟いたばっかりに。諦めきれずに。
別に、情がうつったとか、そういう感じじゃないからいいんだよねぇ。こんなくたびれたオッサンでも、やっぱり幼子は見捨てておけない訳で。風邪だから休みたいと言っていたミジンを無理やり行かせた客がとんでもない殺人鬼だった、俺のせいだ、とひそかに悔んでいる姿が痛々しい。
アテにならない警察を頼らずに一人でヨンミンを追いつめていく姿はなかなか真摯でかっこいい。肉体派じゃないところがいい。かといって頭脳明晰なわけでもない。警察をクビになったのも、女を斡旋しているのがバレたからだし、ほんと、正義はない。でも。
何だかんだと動いているうちにヨンミンの家(住んでた人間は殺した)を突き止めて、単身乗り込んでいく。で、水槽に沈められた女の解体された手足や首なんかを見つける。
そこに現れるヨンミン。
ここからの二人のバトルがそらもう怖い。
ゴルフクラブを打ちおろすヨンミンのマジっぷりと、金槌を振り回すジュンホ、追う者と追われる者の狂気。
それまではいろんなところでジュンホにフルボッコにされていたヨンミンの逆襲が凄まじい。
・・・が、不満の残るラストやわぁぁぁぁ。
これも、実話を元にした作品らしい。2003年9月からの10ヶ月間で21人を殺害したユ・ヨンチョル(柳永哲)という人らしいんだけど、先日観た「人喰い殺人鬼」よりずっと面白かった。
これでいい。別に、犯人がインポテンツだったとか、家庭環境が悪かったとか、そんな裏話は必要ない。
コイツはこんなことしたんだよ、こうなったんだよっていう顛末だけでいいと思う。
ヨンミンがねぇ、見た目二枚目風なんだけど、そのぼうっとした表情が突然目を吊り上げて凄惨な表情を作ったり、笑いながら「殺しました」と言ったり、淡々と金槌を振りあげてお店のおばちゃんを殺したり、「常に異常」というシリアルキラーの見本みたいな感じだった。
女を殺した動機や、過去のことなんか一切説明がないんだけど、それが良かった。だって、ほんとのことなんて本人にしか分からないんだし。結局どこまでも「推測」で作り上げるしかないんだから、こんなふうにいっそ触れない方が怖いと思う。
面白かったのが、ジュンホが警察まで乗り込んできて、みんな会議に出て女刑事しかいない部屋でヨンミンをフルボッコにしているシーン。
ジュンホの先輩や同僚が会議から帰ってきたら、どうも部屋からどなり声がする。またジュンホがヨンミンを殴っているらしい。ドアを開けて入ろうとする同僚を止める先輩。
ジュンホは、ヨンミンがどうしても吐かない本当の住所を知りたくて来ていたんだけど、それは警察側も手を焼いている問題だったから、ちょうど良かったというわけ。
自分たちが暴力を振るったら問題になるから、今は一般民であるジュンホにやらせようとするいやらしさ。
この先輩たちは、ミジンを探すジュンホに向かって「もう死んでるよ」とこともなげに言うんだけど、実際はまだ生きていて、やっと逃げ出したと思ったら釈放したばかりのヨンミンに再度掴まって今度こそ殺されるという、あり得ない失態をさらす。バーカ。
何だかそういう見苦しさや苦々しさ、馬鹿馬鹿しさが満載で、ヨンミンは再逮捕になったけど元刑事であるジュンホのおかげだし、被害者は殺されるし、その娘は一人ぼっちになってしまったし、自分たちはメンツどころの騒ぎじゃない。
犯行当時だけに絞られた犯人の姿。それが余計な斟酌を一切排除させて、犯行の酷さと警察の無能、被害者の悲しみを強調するから、何とも重苦しい気持ちになる。
でも好きだ。
韓国のバイオレンス映画が加速していく過程の一つ。
パネェ。
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