
そして今朝。
せかせかとメイクをする私の隣で、夫は息子に向かって「お前もおとなしくするんやで」と言いながら服を着替えさせていた。
「あぁおとーちゃん、どうやお、これでえいろうか」
「・・・うわ、ダッサ」
「ちょ、ちゃんと見たかえあんた?」
「迷惑にならんようにするがで、挨拶したらさっさと帰りよ」
「ねぇちょっと聞きゆうかえ?」
「お土産忘れたらいかんでー」
という会話をした3分後、一緒に家を出ると、私は火曜日に乗った高速へと再び車を走らせた。
「会いたい人たちに会える」という喜び

南国ICを過ぎたあたりから、心臓がバクバク音を立て始めるのが分かった。
水曜日、改めてくいしんさんに面会(?)をお願いするDMを送った時もかなり心臓が痛かったが、承諾していただき日程を決め、いざお会い出来るとなると、「もう引き返せない」という現実が目の前に迫ってきて胸が苦しかった。
それは「会いたい人たちに会える」という純粋な喜びと、「貴重なお時間を使わせてしまう」という罪悪感、そして一番は、こんなこと初めてだという未知の体験への不安だった。
とにかく、失礼がないように。
話が長くならないように。
しっかりと感謝の気持ちを伝えること。
テンパるときっとどもるだろうな、焦るだろうなと思うけど、そんなこともうどうしようもないことで。
お伝えしたいことはたくさんある、質問もある、でも、ただの一読者としての距離を忘れてはならない。
こんな、何処の馬の骨とも知れない人間と顔を合わせることを承諾してくださったことだけでも、本当に感謝しなければならない。
せっかく高知においでてくださっているんだから。
高知の人間としてしっかりご挨拶しなくちゃ。
そんなことを考えながら大豊インターを降り、気がつけばあっという間に指定された場所に着いてしまっていた。
高知の名産「ごっくん馬路村」を携えて、いざ。

今日はお土産を持参していたんだけど、どうしても皆さんに召し上がっていただきたいものがあった。
それは。
安芸郡にある馬路村の名産、「ごっくん馬路村」というドリンク。
馬路村は人口1,000人足らずの村で、過疎が進む中特産品のゆずや温泉など地元の資源を大切に扱い、「美しい村」であり続けることを目標に掲げているところ。
この「ごっくん馬路村」は銀座にある高知県のアンテナショップ「まるごと高知」でも人気の商品で、とにかく新鮮なゆずの香りとさっぱりした味わい、はちみつの甘さが絶妙なバランスで楽しめる。
私はこれが大好きでぎっちり飲む。一年中飲む。
そして県外の友達には必ず勧めている。
これを、どうしても「灯台もと暮らし」の皆さんに味わっていただきたかった。
箱で買うとパッケージも可愛いから良いんだけど、ただ、重たい。6本入りでも結構ずっしりくる(瓶だからね)。
それでも、お渡ししたかった。
で。
無事に現地に到着し、息子を抱きかかえ(いま思えばベビーカーに乗せたら良かったでよ・・・)、「ごっくん馬路村」の箱と青柳の「土佐の贈り物」、これもはずせなかった芋けんぴを手にして、玄関のチャイムを押した。視界に入る自分の指が震えていることに気づいたけど、心臓の鼓動の激しさの方が我ながら恐ろしかった。
「灯台もと暮らし」の内側を覗く

玄関から出てきてくださったくいしんさんは、写真よりお若い印象だった。
「おはようございます!」(イケメンやし肌が綺麗やなー背が高いなー) ← オバハンか
と挨拶を交わし、自己紹介したのはええもんの、いざ連絡を取り合っていたご本人が目の前に立っていらっしゃるとやっぱり緊張マックスで、今日お時間をとっていただいて感謝していること、押しかけて申し訳なかったこと、「灯台もと暮らし」が好きなことなど、一気にまくしたててしまった orz
ご、ごめんなさい orz
くいしんさんは丁寧にお言葉を返しながら私にも質問してくださり、まともに答えることが出来たかどうかあやしいけど、何とか会話が出来ていることに少し安心もした。
お聞きしたかったことを少しだけ質問させていただいたんだけど、その答えもとても新鮮。
もちろん答えることが出来る範囲内のものだと思うけど、編集部の内側をほんの少しだけ覗かせていただけて、勝手にテンションが上がる。
そうこうしていると、立花さんと小松崎さんも出て来てくださった。
お二人とも20代、とてもお若い!
いきなりの訪問者に戸惑い気味でいらっしゃったと思うけど、私はさらにテンションUP、「石見銀山の記事が!群言堂が!」とまた一方的に喋り倒してしまった orz あぁ orz
だって・・・・
書いたご本人が目の前にいらっしゃるんだぜ・・・
この間のおむすびの記事なんか(ry
お二人は、私の目をしっかり見返しながら、質問に答えてくださった。
そこで知ったのは、
「とにかく作業量が半端ない」
ということ。
今回もタイトなスケジュールで取材の嵐(本数を聞いてびっくりした)、それが記事になってウェブにUPされるまでどれくらいの作業と時間をかけるのか、軽く聞いただけでもすごいと思った。いや、きっと当たり前のことなんだろうけど、そうやってたくさんの人の目、言葉を受けて出てきたものを私は読んでいるんだ、と思うと、ひたすら感動してしまった。
「若い目」を通して地方を見るということ

帰り際には東京のお土産までいただいてしまい(「こんなハイカラなお菓子をありがとうございます」と言った時にくいしんさんが「くっ」と笑った瞬間を私は見逃さなかった)、恐縮しながら再度お礼を述べて、皆さんとお別れしました。
私が車で出て行く瞬間まで、お見送りしてくださったこと、本当に嬉しかったです。
こんな、取材には何の役にも立たないようなただのファンの一方的なお願いを受け入れてくださって、本当にありがとうございました。
お会い出来て本当に嬉しかったです。
これからも、どうか「灯台もと暮らし」が私を含め多くの人にあたたかな力を与えてくれるものでありますように。
本当に本当に、ありがとうございました。
そうして皆さんとお別れした後は、久しぶりに「早明浦ダム」へ。
今日の写真はすべて早明浦ダムで撮ったもの。
朝の早い時間に行ったことがなかったので、普段とは違うダムの姿を楽しむことが出来て良かった。
空の青さも、山の緑も、すべて含まれたこの美しさをどう撮れば見る人に伝わるんだろう。
そう思いながら、たくさんシャッターを切った。
空気が美味しい。
市内で見るよりずっと空は高く、遠くの山にかかる雲の白さが眩しい。



早明浦ダムは、今日も美しかった。
帰りは、ちょうど息子が朝寝に入ったので高速には乗らず、国道32号線を走った。
久しぶりの大豊、相変わらず山道は穏やかな景色で風も気持ち良く、あぁやっぱり良い道だ。
ハンドルを握りながら考えた。
私よりずっと若い人たちが、こうして日本全国の地方を取材して回っている。
「灯台もと暮らし」の文章はとてもあたたかみがあって、飾ることなくそこに生きる人の姿を見せてくれるけど、それが私は好きなんだけど、そこに漂っているのは書き手の「謙虚」という姿勢なんだ。
対象に寄り添うように、しっかりとその内側を捉える時、そこには自分の気持ちを押し出す部分はなくて、あくまで対象の存在のみを描き出す。
伝えたいのはその人のことである、という明確な意思がある。
若い目で見る地方の人々は、どう映るのだろうか。
私は今日、皆さんと話していて、「高知はよさこいとかそういうお祭りばかり取り上げられるから、こういう場所も取材してもらえて嬉しい」と素直に思った。ていうか口にした気がする。
同じ県にいても、分からない知らない部分はたくさんある。それを改めて教えてもらえるのは本当に幸せなことで。
真っ直ぐな目で、謙虚な姿勢で、丁寧に接すること。
自分よりも長い時間を生きている人たちと話す時でも、同世代であっても、それがなければあんなあたたかい記事は書けない。
謙虚であるということは、イコール対象を尊敬するということ。
そんなことを思いながら、行って良かった、会えて良かった、本当に幸せな時間だったとしみじみと思いました。
なんて素晴らしい日。
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