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さて。

「DRESS」で以前公開していただいた記事、「引き留めないのは、プライドが邪魔をするから。別れを受け入れる男性の心理とは」でも書いた話なんだけど。

好意を持っている女性からある日突然「縁を切りたい」と言われて、抵抗する男性っているのだろうか。

私の場合は、そもそも自分から別れを切り出すパターンがひとつしかないのでわからないんだけど、女性たちから話を聞いていると、やっぱり受け入れてそのまま別れてしまう男性のほうが多い気がする。

プライド。

見栄。

優位性。

すがることは自分の価値がなくなることだと勘違いしている不器用な男性ほど、痛みをこらえて平気なフリをする。

どうか嘘であって欲しいと思いながら。

何とかしなければと焦りながら。

たったひとこと、「好きだ」と言うことができれば、回避できる別れもあったはずなんだけどね。

すがることは、負けること。

頑なな心のままで、結局大事な女性を失ってしまう男心の難儀さは、本当によく耳にする。

 

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「俺のほうがあんたの気持ちを理解してるってこともあるんじゃない?」

上の言葉は、昔付き合っていた男に別れを切り出したときに言われた言葉。

1ヶ月様子を見ていて、メールもなければ電話の1本もなく、私の誕生日も見事にスルーされたとき、あぁもうやめようと普通に思った。

せっかくご飯を作っておすそ分けしても、うちの前まで来て車があるのも見ただろうに、ドアノブにタッパーを引っ掛けて無言で離れ、後で「返したから」とメールしてくるような男だった。

他人の気持ちがわからない。自分の振る舞いがどう思われるか想像することができない。

ただ頭にあるのは、私を傷つけたいことだけ。痛みを残したいだけ。寂しい思いをさせたいだけ。

そういうのが手に取るようにわかり、どんどん気持ちが冷めていった。

もちろん、無言で終わることもできた。

お互いにそれだけ心が離れているのなら、フェードアウトでそのまま「なかったこと」にできただろう。

それでも、私は筋を通したかった。

相手がそんな人間だからこそ、自分だけはまともでありたかった。

関係を終わりにするのなら、きちんとけじめをつけること。それは私のためでもあるけど、相手にとっても大切な区切りになるだろう。

それが、彼に対する私の「誠意」だった。

私を好きなまま、ただ追われることだけに自分の価値を見出していた人だったから、私から別れを告げられたらどれだけダメージがあるかは容易に想像できた。

だからこそ。

「これがお前のしてきたことの結果」だと、ちゃんと伝えたかった。

で、「縁を切ろう」という話をしたときに出たのが上の言葉。

不機嫌丸出しの顔で、

「で? いったい何の話? 全然先が見えないんだけど」

と言うので

「縁を切りたい」

と答えるとコンマの早さで「わかった」と返してきた。

そんなものだ。予想通り。

彼は、ぐだぐだとこれまでの不満をぶつけていたけど、私はほとんど聞いていなかった。

悔しいんだろうなぁ、せめて一矢報いたい気持ちなんだろうなぁ。そんなことを思いながら。

正座して拳を固めている彼を見るのはこれが最後だと思うとそれも新鮮だった。

その固い表情は、痛みを懸命にこらえているのがわかる。それでも、彼はやはり本当の気持ちを口にできずにいた。

彼が言わないのなら、私の心にも変化はない。

ただぼんやりと座って話を聞いている私の姿に別れる意思が変わらないと悟った彼が口にしたのが、「実は俺のほうがあんたの気持ちを理解してるってこともあるんじゃない?」だった。

びっくりして目が見開いたのを覚えている。

今度はこちらがコンマで「それはない」と否定した。

他人の気持ちがわからないあなたに、どうして私の痛みを理解できるのか。

どうしてそんな一方的なことが言えるのか。

この言葉の裏には、

「別れたいのは本心じゃないんだろう? 本当は俺のことが好きなんだろう?」

という必死な「願い」が透けて見える。

裏を返せば、

「お前のことが好きだから別れたくない」

と告白しているようなもの。

それをストレートに言えない弱さが、最後まで私を自分から遠ざけた。

 

別れを告げられた側と告げた側の温度差

結局、彼のところにいたのは2時間くらいで、強張った表情のまま口を引き結んでいる彼の顔にも飽きたころ、私は立ち上がった。

彼は正座したままだった。

いつもなら、喧嘩のときでも嫌味を言うために玄関までは送ってきたんだけど、微動だにしない姿を見て、あぁ本当にショックなんだな、と思った。

私が「じゃぁ」と声をかけても無言のまま、彼は最後まで自分の気持ちを口にすることはなかった。

帰宅してから数時間後、メールが届いた。

そこには、

「誰が俺を救ってくれるんだ。そんな人はどこにもいない。耐えるしかない。耐えられなくなったら首をつるか。それは避けたい」

みたいな泣き言がずらりと並んでいて、私は文字通り呆気にとられてしまった。

完全に、自分のことだけか。

せめて、「今までありがとう」の言葉でもあればまだ良かった。それすらない。私の影など、どこにもなかった。

それでも、彼が言いたかったのは、ただひとつ、

「別れたくない」

だっただろう。

でも、受け入れてしまったから。私は自分の気持ちを翻さなかったから。本当に別れてしまったから。

言えるはずがない。

すがったところで私は戻らない。あっさりと帰っていった私に愛情が残っていないことを予想して恐ろしかっただろう。

彼にできるのは、捨てられてつらい思いをしている自分を伝えるだけ。

メールを削除しながら、私の心はしんと静まり返ったままだった。

縁を切ると決めた時点で、私の中で彼はもう過去になっていた。試すために別れを持ち出すほど幼稚じゃない。

決めたのは私の心。選択したのは私自身。だから、彼と向き合ったときに痛みはもうない。

今まで、彼のほうからは何度も別れようと言われたけど、私から告げたことはただの一度もなかった。

だからこそ、彼のほうも私が本気であることを悟っただろう。

散々私の愛情にあぐらをかいてきた結果がこれだ。

別れを告げられた側と告げる側では、こんなにも気持ちに開きがあるのを初めて知った。

そして。

追いかけることのできない人間は、孤独を背負うしかない。

それが彼の選択。

 

別れは心が決めるもの

彼とはそのメールをもらったのが最後で、今では会うこともないし、消息も聞かない。

私はというと、今でも自分の決断を受け入れているし、別れを後悔したことはない。

後で後悔するような選択を、私はしない。

彼のことがそれまで好きだったからこそ、どんな扱いを受けても自分だけは筋を通そうと思った。

それが、彼の存在を尊重するということだから。

きっと彼には伝わらなかっただろう。メール1本で済む別れ話をわざわざ顔を見て話すなんて、自分に未練がある証拠くらいにしか思わなかっただろう。

だから「俺のほうがあんたの気持ちを……」なんてふざけたことが言えるのだ。

ふたりの関係にしっかりけじめをつけることが誠意だと、そんな私の気持ちは彼にはわからない。

それでもいい。私は自分の行動に満足しているし、彼も彼なりにきっと幸せな日々を過ごしているに違いない。と思いたい。

 

男心の難儀さを目の当たりにして思ったのは、「自分を守ることばかりが常に幸せではない」ということ。

プライドも見栄も捨てなければいけない瞬間は、彼のような男には必ず訪れる。

それも、自分が引き寄せてしまったことだ。

そのとき、本心に従える強さを持つことができれば、きっと違う結末を手に入れることもできるだろう。

他人の気持ちがわからないのなら、せめて自分の心には素直になる柔軟さを、今の彼が持っていれば良いなと思う。

■ すぐに「別れよう」と言う男の間違った愛情表現。
■ 「未練」からやっと恋と向き合える、男の不器用さ

 

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